特発性血小板減少性紫斑病(ITP)-10年間の闘病記録

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 私は2009年に特発性血小板減少性紫斑病を発症しました。

それから約10年の間、さまざまな治療をアメリカ、イギリス、日本で経験してきました。

 

この記事を読んでくださっている方は恐らく、私と同じようにこの病気に苦しんでいる患者さん本人またはそのご家族、そしてドクターをはじめとした医療関係者の方々、ではないかと思います。

 

私は現在40歳オーバーの普通のサラリーマン男です。

医学知識には全く疎い、普通の社会人です。

従って、この病気に関して私が今後書き留めていく内容に関しては、誤解や偏見などが多分に含まれてしまう可能性がある点にはどうかご注意ください

それでは簡単にですが、私が経験してきたことをお伝えします。

 中間管理録トネガワ(1) (ヤングマガジンコミックス)

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発症 

 

2009年12月アメリカのニューヨーク市に住んでいた時、年に一度の健康診断での血液検査で血小板の異常値が見つかりました。 

 

ドクターからの緊急の電話を受け取ったのは、健康診断翌日の土曜日の午前中でした。「血小板数が1万5千(15 x 10^3 / μL)しかないので、すぐに病院に行って下さい」、「口や鼻からの出血はありませんか?腕や足に内出血はありませんか?」

休日の午前中にドクターから予想だにしない話を電話越しに聞いて、少し戸惑いはしましたが、病院に行けばすぐに治るだろう、くらいの気持ちで病院に向かいました。

 口や鼻からの出血はありませんでしたが、手首の内側や二の腕、ひざまわりに内出血がある状態でした(言われるまでは全く気づいていませんでした)。

 

治療①ステロイド治療

 

 まずは、ステロイド治療が始まりました。医学的に言うと、「免疫抑制剤である副腎皮質ステロイドを服用して、マクロファージにより血小板が破壊されるのを抑制する」のだそうです。

私が服用した薬はPrednisoneというもので、日本だとプレドニンとか、プレドニゾロン(Prednisolone)とか呼ばれているものだと思います。

改訂第3版ステロイドの選び方・使い方ハンドブック

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1日60mgを3日間服用すると、血小板数は2万8千まで回復しました。

その後も量を減らしながら服用を続けた結果、20日には4万8千まで回復しましたが、そこがピークとなり、その後再び数値が低下していきました。

ステロイド治療を始めて2ヵ月後、血小板数は再び2万を下回るレベルまで低下しました。

この時初めて、この病気の怖さを少し実感したと思います。

 

治療②ホルモン療法

 

ステロイド治療での薬の効果と副作用を考慮してか、ドクターから新たな治療法が提示されました。それが、Danazol(ダナゾール)の服用と、WinRho(ウィンロー)の点滴治療でした。

WinRhoの投与後一週間で、血小板数は16万6千まで一気に回復しました。

「これで治った!」と本気で思いました。

隔週くらいの頻度で通院していましたので、その苦労からも開放されると思いました。

しかし、それから一ヵ月後の血液検査では、5万2千まで下がってしまいました。

その後も下がり続け、本治療開始から7ヵ月後には1万2千まで下がってしまいました。

ドクターからすれば、ある程度長い期間、一定程度の血小板数を維持できたことはそれなりに意味があることなのか、2度目のWinRho治療を行いました。

点滴直後こそ再び12万5千まで回復しましたが、その後再び低下基調に戻りました。

一年後には5万程度まで下がりましたが、その後しばらくは3~5万をキープし続けましたので、それなりに効果はあったのだと思います。

ただし、その間副作用にかなり苦しめられました。私だけかもしれませんが、ふらつき感やまぶしい感じ、倦怠感など非常につらい思いをしました。

本治療を開始して約2年半後、再び3万を下回るレベルになったため、次なる治療法を提示されました。 

がんばらなくても20歳若返るナチュラルホルモン療法

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治療③免疫抑制治療

 

 ニューヨークでの治療をはじめてから約3年後、2012年8月リツキサン(Rituximab)の点滴治療を行うことになりました。

375mg/m^2を週一回、4週間にわたる点滴を行いました。

最後の点滴から2週間後、血小板数は15万まで回復しました。

10万前後の数値を維持したまま、リツキサン治療開始から約半年後、日本に帰国することになりました。

 

日本に帰国後も数値は維持し続け、結果ニューヨークで受けたリツキサン治療は約4年もの間、効果を発揮してくれました。

しかし、その後イギリスのロンドンに引っ越してからしばらくしたのち、再び数値が悪化することになりました。

  

治療④ステロイド治療

 

 イギリスのロンドンに引っ越してきてから一年が過ぎた頃、数値が再び5万前後まで低下しました。

急激にというよりは、徐々に下がって行きました。

それでも5万前後でキープする状態が続いたため、薬や点滴といった治療も特に行いませんでした。

しかし、一年に一度の健康診断で胃潰瘍の疑いありとのことで、胃カメラ検査をすることになりました。

組織片を採取したりするためか、胃カメラ検査をするにあたってはある程度血小板を上昇させておく必要があるとのことで、再びステロイド治療を短期的に行うことになりました。プレドニンを服用し、8万程度まで上昇したところで胃カメラ検査を受けました。

結果的には胃潰瘍はなく、胃に問題はありませんでした。 

一冊できわめるステロイド診療ガイド

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治療⑤免疫抑制治療

 

 イギリスのロンドンで二年半を過ごした後、日本に帰国しました。

帰国後、数値が3万前後まで低下していたため、ドクターと相談の上、以前ニューヨークで受けた2度目のリツキサンの点滴治療を日本で行うことにしました。

少し前までは日本ではリツキサン治療は保険適用外だったようですが、最近適用が認められたとのことでした。

私の場合、過去にステロイド治療もホルモン療法も効果があまり長続きしなかった一方で、リツキサン治療はかなりの長期間効果を発揮したというトラックレコードがあったため、この治療に再度踏み切ることにしました。

 

ニューヨークで受けたリツキサンの点滴治療から約5年半後、2018年3月に2度目のリツキサン治療を日本で受けました。

しかし、2度目は全く効きませんでした

一度も10万台を回復することなく、再び3万前後まで低下してしまいました。

リツキサン治療から半年後、私は新たな治療法を選択することにしました。 

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治療⑥脾臓摘出

 

 アメリカ、イギリスに住んでいた頃は一度も話のなかった脾臓(ひぞう)摘出手術の話を日本のドクターから聞きました。

 出血症状が無く、血小板の数値が3万を上回っている限りにおいては、必ずしも何か治療を行う必要はないようでしたが、私の場合、このまま何もしなければ再び1万台まで低下するのではないかと考え、脾臓摘出手術を受けることにしました。

ただし、ドクターからは手術が無事に成功しても、約4割の症例で追加治療が必要になると報告されていると言われました。

どういう人が完治し、どういう人が再増悪・追加治療をすることになるのかは、事前の検査等では分からないそうです。

それでも私が脾臓摘出手術を選択したのは、今まで行ってきた様々な内科的治療では完治できなかったため、外科的治療に賭けてみたいという気持ちが強くなったためでした。

  

入院後、ガンマ-グロブリン(400mg/kg)を5日間点滴しました。

これは手術および術後に耐えられるレベルまで血小板の数値を上昇させるためのもので、手術予定日の前日には6万まで上昇しました。手術は入院から7日目に行われました。

脾臓摘出は腹腔鏡手術にて行われ、手術時間はトータルで8時間程かかりました。

事前に聞いていた話では4~5時間とのことでしたので、予想以上に時間がかかりました。

出血が予定よりも多かったようで、血小板を輸血しながらの手術でした。

おへそ近くを4箇所、それぞれ2~3cmを切開しました。

手術後、そのうちの2箇所からドレインと呼ばれる管がつながれた状態になりました。

体の中と外が管でつながっている、とても不安定な状態で術後数日を過ごしました。

管が体の表面と接している部分が時々とても痛くなりました。

トイレや検査に行くときも常に体の中から管が2本出ている状態なので、この上なく歩きにくかったです。

すい液の漏れ(アミラーゼ)がほとんど無くなった後、その管が抜けようやく手術が終わった気がしました。

9月3日から入院し、9月10日に手術、9月16日に退院、とほぼ予定通りに2週間で自宅に戻ることができました。

退院日の血小板の数値は、ガンマ-グロブリンの効果により21万まで上昇していました(脾臓摘出による効果ではありません)。

退院直後はものすごくゆっくりしか歩けませんでしたが、翌日から出社しました。

 

術後1ヶ月以上経たないと、脾臓摘出の効果は見極められないとドクターからは言われていました。

退院後の経過は以下の通りとなりました。

  • 1週間後>33万
  • 2週間後>31万
  • 1ヵ月後>19万7千
  • 2ヵ月後>19万8千
  • 3ヵ月後>19万4千

 

現在、術後3ヶ月が経ちましたが、幸運にも正常な範囲内で推移しています。

 

 所見

 

 まだ再発する可能性は勿論ありますが、今は手術をして本当によかったと思っています。

前述の通り、4割の方は術後も追加治療が必要とされていますので、決して成功率の高い治療法ではないと、個人的には思っています。

腹腔鏡手術とは言え、体に傷も残りますし、術後すぐの時は「なぜ手術を選択してしまったんだろう」と後悔もしました。

今後医療が更に進み、手術の効果が期待できるかどうか、ある程度術前に分かるようになればいいのに、と本当に思います。

 

 また数値が悪化し、追加治療が発生した場合は、本記事を更新したいと思います。

恐らくその場合は、レボレード錠の内服になるのではないかと思います。

 

本病気は国の難病指定になっていますので、特定医療費支給認定を受けられた方が経済的負担が軽減されます。

手続きもそれほど煩雑ではありませんので、未だの方は検討されることをお勧めします。

公費医療・難病医療ガイド 平成29年4月版

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